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ワンスアポンなタイム in Hitachi (Vol.6)

Vol.6  『おしえて通学路2』

 

ぼくには小学のうちにどうしてもやっておかなければならないことがある。


ここは校門を出てすぐの長くゆるやかな階段。
段数は15段くらいかな、
一段の長さがぼくの身長ほどある。
きつめの坂道が階段状になったような所。
この階段の一段一段を一歩づつ駆け上がり最上段まで到達するというミッションだ。
途中で二歩になったらアウト。
だから大股で行くんだけど、勢いがなくなると失速して次の段に届かなくなる。
下のおどり場は長さが10メートルくらいあるからそこがスタート地点というわけだ。
この助走区間で加速して階段を登ってく。
今日もまたやっちゃうよ。カバンを置いてと…

…フゥ〜

出だしからおもいっきりスピードを上げて階段区間に突っ込んだ。
一段目から攻めていく。段のギリギリ奥で接地して、二段目も奥で接地、
次も最初のうちはいい感じ。
タタタ、タタ、タ、タッ、タッ、タン、タン、ターン、ターン、ターーん、ターーん、タァー〜ン、
あ〜っダメだ(>_<)
徐々にスピードが落ちていき、
今日もあと残り数段のところで止まってしまいゲームオーバー。
スピードも大事だけど、もっと軽快に弾んでいかないと。
どうやったらスピードを落とさず最後まで登っていけるんだろう。

 

いろいろ試してみよう。
次の段に足を届かせようとしすぎると、
からだがうしろにのけぞってしまい遅くなっちゃうみたい。
登りだし。もっと前へイメージイメージ…
からだの傾き変えてみようかな。
徐々にスピードが落ちるのは仕方ない。
要は15段目でスピードが0(ゼロ)にならなければいいんでしょ。
そのためには一歩一歩しっかり地面をとらえてもっとシャープにいかなくちゃ。
最後まで歩幅が小さくならないようにしっかりといい角度でバウンドする。
スピードの変化に合わせて腕もしだいに大きく振って、うまく流れるようにする。

 

気がつくとまわりに人が集まってきた。
脚力自慢の6年生とかも “オレもやる!”って。
このミッションはちょっとしたぼっちのひとときだったけど、
いつしか放課後の子供たちを映すひとコマになっていた。
ぼくがこれを始めたのは確か4年生のころ。
上級生が来ると怖いからいなくなるのを待ってまたやる。
学年が上がるごとに少しづつ段数が伸びてきた。
そうやってぼくも6年生になったしクリアまであと1、2段のところまで上達していました。
まだクリアできた人を見たことがない。
いつぞやのいじめっ子たちもいた。
なぜかこれをしているときは何も意地悪をされなかった。

“何やってんの?”

同じクラスの同級生、運動が得意な子も来ていた。
普段は相手にもされないんだけどね(^^;    まあ、いいや。
なんか賑やかでいいかなぁ。
このときだけは友達になれたような気持ちになりました。
そして、この場所にいるみんな、
自分が最初にクリアしてやるぞって空気になっていました。
やる気まんまん。みんな次々と駆け上がっていきます。

よ〜し、次はオレ。

行っくゾー!!

 

佐藤 敏哉

  • 2020-06-06 (土) 18:45
  • コラム
  • 作成者:long jumper

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