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ワンスアポンなタイム in Hitachi (Vol.8)

Vol.8 『弱虫スパイク(第五話)』


練習、やったよ。


いろはサンもまつはサンも短距離走をやっている。
ぼくもそうだから種目別練習も一緒だ。
部員が少なくても陸上部だし顧問の先生はいるけど、
監督やコーチのように何かを教えてくれるわけではない。
で、練習メニューは自分たちで考えるしかない。
だいたいいつも いろはサンがやる事を決めてくれる。
もしかして いろはサンが小学生のときにコージおじちゃんとやってたやつかな?
ちょっと期待しちゃう。

”じゃスキップやるよ。”

スキップといえば、嬉しいときとかにニコニコルンルン♫って
自然にしたくなるものなんじゃ?(^^;
…でもまぁ今もそんな気分だし、だから三人で横並び。

“一本目。ヨーイ、ゴー。”

タッタ、タッタ… 、一斉に前に出た。
おー、いいなぁ、これが陸上の練習ってやつなんだ。
ぼくが選んだ陸上部、嘘じゃない、
始まったんだ。嬉しさが込み上げてきた。
不安なことがあっただけに想いもひとしおです。
今、ステップを踏むたび、
その脚の動きに呼応するように腹筋がうずくのがわかる。
背筋がしなるのがわかる。腰が。腕が。
とっくに知ってるはずのスキップなんだけど、
不思議と新鮮に感じました。
これまでのぼくは、速くなるためにただ全力で走ることしか能がなかったのです。
されどスキップ、見方が変わった。
しかもいろはサンたちと一緒にするそれは特別なもののように思えたのです。


そしてそして、つぎはもっと陸上部っぽいよ。
『イモ上げ走』
(もも上げ走のことです。当時ふざけてそういうふうに言っていました(^^))
いつもの走りより高く高くももを上げながら速いリズムを刻んでいきます。

“シュッシュッシュッシュッシュッシュッ…”
”声に出してやってみっ(^^)”
“えっ!マジですか?”

ちょっと恥ずかしい。
いろはサンもまつはサンもとても陽気なひとだ。

“ホレ、サトーくん。もっと高く、高く…”

先輩たちのもも上げはすごくシャープで速い。しかも高い。
ぼくは照れながらも

“シュッシュッシュッ”


声はともかくキツイけどガンバった。
実際のところ大会のときにこんなに高くももを上げて走る人はいないわけだけど、
これはこれできっと意味があるんだ。
こんなふうにひとつの動きに特化した練習があるんだね。
なんか理論的だな。科学だね。
なるほど、なるほど、わかった、、、ぞ〜
走ることを個々の動きに分解し、
いろんな角度から分析・実践していくことで
それらの複合体である走りの完成形を目指していく?のかな?(^^;)
中学生になって算数も数学になったことだし、、、ん?
それ、関係ある??なんか大人っぽい。

“ホレ、二本目。行くよー!!”


佐藤 敏哉

  • 2020-06-21 (日) 18:56
  • コラム
  • 作成者:long jumper

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