- 2020-06-28 (日) 20:31
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日立陸上クラブ Hitachi Track & Field Club
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Vol.9 『弱虫スパイク(第六話)』
はじめてのスパイク
ぼくはいろはサンのところに寄ってから部活に行くのが好きだから、
2年1組に立ち寄るのが日課になっていた。
“足のサイズいくつだっけ?この中から選んで。”
いろはサンがぼくにスパイクを選ぶように言った。
部の備品なのだそう。
体育館倉庫の一角に陸上部の備品を置くスペースがあった。
“いいんですか!”
白にオレンジのラインが入ったスパイクを手に取った。
靴底に先のとがったピンがついている。
”土のグランド用はこんなふうにとがってるんだ。”
今日も放課後、校庭の東の端にある松塚に集合して練習が始まる。
いろはサンが切りだす。
”今日は100メートル計ろうぜ。”
“えーー。やるの〜”
と、2年生で800mのくくりサン。
“いいじゃん、やろうよ。”
まつはサンもやる気だ。
我が陸上部は5人しかいないから
ときたま中長距離の先輩を巻き込んでこういうことをする。
松塚の下に座り、ぼくらは準備した。
昼間の授業中からジャージの下にずっと着ていたTシャツとランパンになった。
そして靴下を脱ぎ、はじめてのスパイクに素足を通した。
(当時、スパイクは裸足で履くのが流行っていました。
その後の私、靴下を脱ぐ行為そのものが非日常へのスイッチとなっていきました。)
何なんだろうこの感じ。
足が地面と対話してるっていうのかな、か、感覚が。。。
グランドの西の端まで100メートル。
空が少しだけ赤らんできた。
合唱部の歌声が聞こえる。
気がつくと練習なのにドキドキが止まらない。
タイムを計る前に軽く流そう。
おー!!ピンの足跡がつく( ゚д゚)
へー、これがスパイクかー。
グランドの土はコチコチに硬くなっていて歩くくらいではピンが刺さらない。
でも走ると土をえぐりガッツリ捉えることができる。
これなら滑る心配がない。
小学生のときに50メートルなら計ったことあったけど、
100メートルはどうなんだろう。
50メートルのタイムの2倍まではかからないことはぼくでも知ってる。
先輩たちにガッカリされたくないなぁ。
”走ったのを見て何秒か当ててやるよ。けっこう当たるんだぜ (^^)v”
いろはサン、楽しそう。
”くくり、先行きなよ。”
“えー、マジで。”
“上級生が率先してやるんだろ。サトーくんはオレのあとでいいからね。”
緊張してるぼくにそう言った。
優しいなぁ、いろはサン。
“ヨーイ、Go. ”
くくりサン出た!
アナログ針でコンマ1秒まで計れるストップウォッチ。チチチチチ・・・
とゴール地点のまつはサンの手の中で鳴ってるはず。
当てるって、どうやって数えてんのかな?
‥11‥ 12‥ 13‥14‥‥
くくりサン戻って来た。
“何秒だった?”
“14秒2だろ。”
(実際のタイムは忘れてしまいましたのでテキトーです)
“あっ、すげー。当たった!”
佐藤 敏哉