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ワンスアポンなタイム in Hitachi (Vol.10)

Vol.10  『もうひとつの運動会』

 

地区対抗リレーを走り終えたぼくは4年4組のところに戻ってきました。
今年も春日町チーム、冴えなかったなぁ(..) 
べつにいいんだもんビリじゃなかったし。
運動会での楽しみと言えば、ぼくが出る競技ではありません。
それはパパが出るリレーなのです。
[ご父兄部門?]のリレーってのがあって、パパは去年それに出て大活躍でした(^^)
担任の先生にも

”お父さんすごいねー”

って言われたりとっても嬉しかったんだ。


パパは学生時代、野球部で鍛えてたんだって。
古い白黒の写真見せてもらったことある。
ユニフォーム着て いがぐり頭に学帽をかぶっていた。

”パパは足が速かったからセンターを任されたんだぞ。”

ってよく自慢された。

 

プログラムによると次がパパの出番。
見逃すまいと首を伸ばした。人がいっぱいでよく見えない。
もう始まっちゃった。パパどこかな? 
い〜〜いた。あそこに立ってるのがそうだ。
パパのチームは今何位?リードされてる。
でも大丈夫、きっとパパならやってくれる。
パパがバトンをもらった!
遠目でもわかるあの背中。

♫タカタッ、タカタッ、タカタッ、タカタッ、、♫

木琴がアップテンポで鳴り響く、♫♫定番のあの曲がかかった。
速い速い。
いやがおうでも盛り上がります。
すごいすごい‥‥前の人にどんどんせまっていく。 
‥4メートル‥3メートル‥2メートル‥‥勢いそのままにカーブに入った。
もう相手は目の前だ。
よし、抜ける抜ける。

”行けー!”

恥ずかしいのでこころの中で叫んだ。
前の子たちみんなも立ち上がっての応援。
あー肝心なとこなのに見えないー。

‥アレっ、どこだ⁉︎ 見失なった( ゚ ゚);

エっ、どこ???

♫タカタッ、タカタッ、、、

ざわついた、そのとき。
ぼくの目に信じられない光景が飛び込んできた。
パパが、バランスを崩して転んだのだ。うそッ(° °)
前転して、パパの大きな体がなんと、タイヤのように転がって!!
沈んで見えなくなった。
そのあいだにほかのチームに抜かれていく。。。
ひとり、またひとりと。やだぁー、見たくない(>_<)
速く起きて
抜き返してよ
もう無理だった。
ぼくにもそのくらいわかる。
自分が負けた時よりも残念だった。
うろこ雲がぼやけてく、南と西の中間あたりを見ていました。
…終わってしまった。

“お父さん大丈夫だった?!”

先生にも心配されるほど派手な転び方でした。

“ゴメンな、転んじゃったよ。”

“うん。”

 

佐藤 敏哉

  • 2020-07-05 (日) 18:12
  • コラム
  • 作成者:long jumper

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