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ワンスアポンなタイム in Hitachi

Vol.1 『弱虫スパイク(第一話)』

 

ヴ〜ッ、息ができない。オレどうなっちゃうんだ⁉︎

 

このまま死んじゃうのか?
全力疾走中に横から6年生に押されて、
ぼくは校庭でうずくまっていた。
転んだとき打ちどころが悪かったようで
しばらく息ができなくなっていたのだ。

 

ぼくは高萩小学の5年生。
教室ではいつもクラスメイトからいじめられて、
目立たないようにすみで小さくなっていた。
下校時はいじめっ子から逃げるようにして坂を急いで降りたものだ。
からだも弱く、体育の授業はどちらかというとキライ。
ひとり宇宙図鑑を見たり
恐竜の絵を描いているようなタイプでした。
そんなぼくでも一年でたった一日だけ輝けた日があった。

運動会だ!!

みなさん覚えてますでしょうか、地区対抗リレーってやつ。
ぼくの住んでる春日町チームは子どもが少なく
5年生の男の子はぼくしかいない。
だから足が遅くても必ず選手になれるのだ。
バトンを受けた。力いっぱい走った。
アレっ? おかしいぞ、前の子を追い抜いちゃった!
見に来てくれたパパとママ、ばあちゃん、
近所のおばちゃんがとても喜んでいる。
ぼくが走ることで喜んでくれる人がいるんだ。
って思った。
こんなの初めて。

 

・・・大丈夫か〜お前!
校庭で苦しむぼくにおどろいた6年生たちが寄ってきた。
しばらくして息かできるようになり事なきを得た。
わけもわからず競争するはめになり、
仕方なく走ったそれは 上級生からの挑戦だったのです。
ひどい体験でしたが、こんなぼくでもある意味目をつけられたんだなって、
ちょっとだけ鼻高々な気分になりました。

 

”だだいま〜。おれ、中学になったら陸上部に入るよ!”

佐藤 敏哉

  • 2020-05-02 (土) 22:03
  • コラム
  • 作成者:long jumper

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